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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)670号 判決 1960年7月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由は別紙のとおりである。

上告理由第一点について。

論旨は、原判決は地方公務員法六条一項並に二八条二項の解釈を誤つた違法がある旨を主張するのであるが、要するに、右二八条二項所定の場合のほか、当該公務員の意思に基く場合でも休職にすることはできないと主張するに帰する。

地方公務員法二八条は、その意に反して休職することができる場合を規定しているけれどもその意に基く休職については法律に何等の規定がない。休職は退職と異り公務員について職員たる身分を保有しながら職務に従事しない地位におくことであつて、このような状態は、右二八条二項各号の場合のほか、本来法律の予定するところではないのであるが、それにもかかわらず、当該公務員が休職を希望し、任命権者が休職処分の必要を認めて依願休職処分をした場合に、あえてこれを無効としなければならないものではなく、かく解釈したからといつて、もともと休職が本人の意思に基くものである以上、当該公務員の権利を害することはない。原判決が上告人の請求を容認しなかつたことをもつて、所論のように、地方公務員法六条一項及び二八条二項の解釈を誤つたものということはできない。論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は、原判決は地方公務員法の目的を逸脱し憲法の違背がある旨を主張するのである。

しかし、原判決が地方公務員法の解釈適用を誤つていないことは第一点説明のとおりであり、所論憲法二二条、二五条、二七条違背の主張も、本件休職が上告人の意思に基くものである以上、その前提において理由がない。

同第三点について。

論旨は、原判決は、上告人の本件休職願は任意性がない旨の主張及び給与に関する上告人の主張について判断を遺脱した違法がある旨を主張するのである。

しかし、所論休職願の任意性について原判決は一審判決の理由を引用しており、そして、右一審判決の理由中では、上告人は犯罪の嫌疑により警察署に逮捕、拘禁され、被上告委員会の教育長が同委員会の主事を同伴し拘禁中の上告人を訪れ面接した際に、上告人は眼に涙を浮べながら、まことに申し訳がないから、退職させて貰いたい、それができなければ休職でも何でもよい、自分の処置を一任する旨申し出た上、主事が万一の場合のため予め作成し携帯していた休職願書の上告人の氏名下に任意に拇印して教育長に手渡した事実を認定しており、右休職願書は上告人の自発的な意思に基いて完成されたものと判示しているのであつて、原判決に所論のような判断の遺脱はない。次に、上告人の給与請求の訴は、一審判決がこれを却下し、原判決はこれを是認し、そしてこの点に関する原判示は正当であるから、原判決が所論の点について判示しなかつたのは判断を遺脱したものではない。論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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